企業法務部や法曹界で急拡大する仮想データルームとAIによる契約書分析

日本企業の多くがデジタルトランスフォーメーションを模索しており、特にその恩恵が大きい法律事務所や企業の法務部では、仮想データルーム(VDR)やAIを活用した契約書分析機能に注目が集まっています。

そこで本稿では、法務に焦点を絞り、契約文書を格納する仮想データルームのプラットフォーム「Venue」とAIを活用した契約書分析ツール「eBrevia」を導入するメリットについて詳しく解説します。

日本におけるリーガルテックの現状

そもそもリーガルテックの概念・用語は、訴訟大国と言われるアメリカで2000年代のはじめに生まれました。日本でも2015年頃からベンチャー企業を中心にリーガルテック関連の企業が盛んになり、今日まで広がりを見せています。

リーガルテックの導入の現状。なぜいまリーガルテックなのか

日本では法律事務所と企業の法務部などで、リーガルテックの導入が急速に普及しています。矢野総合研究所のレポートによると、日本のリーガルテック市場は2019年から2023年にかけて37%増の353億円になると予想されており、これは2016年の2倍に相当する市場規模です。(Sources: https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2224)

きっかけは2020年。日本政府が電子署名法の解釈を一部変更したことでリーガルテックの普及・拡大に弾みがつきました。電子署名法の改正は、コロナ禍において様々な役職の管理者が契約書に押印するためだけに出社するという状況を解決する契機になっただけではなく、日本政府がクラウドベースの電子署名の合法性を明確にしたガイドラインを発表したことで、リーガルテック導入は更なる追い風になりました。

企業の法務部門でもリーガルテックが広がっている。その背景とは

契約書に必要な電子署名は、日本で最も広く利用されているリーガルテックです。

従来の紙の契約書締結では、契約書の印刷、製本などの作業はもちろん、契約書作成の過程において契約内容が改ざんされてないか一言一句正確にレビューしなければなりません。一方、契約書作成段階からクロージングまで全面的にリーガルテックを採用することでペーパーレス化が推進され、電子署名に必要な文書のデジタル化は、契約内容レビューの業務効率化に貢献します。この利便性が、リーガルテックの普及要因です。

リーガルテックの導入メリットとは

法務に関わる業務は、主に書類作成や確認、締結業務があります。法務は専門性が高く、知識、経験をもとに膨大な情報を活用して取り組むことが求められます。時間をかけて人がやらなければならない実務は必ず存在するため、法務部門では省力化を図りながらいかに効率よくできるかがコストパフォーマンスを向上させるキーとなります。

リーガルテック導入により、法務部門は、情報収集にかかる時間やコストを削減し、人がやるべき業務にリソースを集中的に投下できるようになります。まさに、リーガルテック導入の大きなメリットです。

法律事務所の仮想データルーム利用

法律事務所の仮想データルーム(VDR)導入も、近年、急速に進んでいます。その背景には、法律事務のデジタルトランスフォーメーション・DX戦略があることを理解しておく必要があります。

法律事務におけるDX戦略。その背景

日本政府は、デジタル庁や内閣府規制改革推進会議を中心とし、すべてのセクターにおいてデジタル化のための規制改革を進めています。アナログ文化を前提とした「書面・押印・対面」規制が少しずつ緩和され、生産性とサービス付加価値向上を目指したデジタルトランスフォーメーションが進められており、弁護士事務所もその例外ではありません。

DX戦略の中核をなすVDRの活用例

弁護士業界のデジタルトランスフォーメーションのメインイシューは、デューデリジェンス業務です。デューデリジェンスは扱うデータも非常にデリケートであり、安全性とセキュリティはデジタルドキュメントを格納するうえでの最優先事項。

VDRではアクセス管理を細かく設定でき、閲覧の可否はもちろん、印刷の可否、ダウンロードの可否や一定時間を過ぎるとタイムアウトで非表示とすることも可能に。閲覧履歴の管理は、最も重要な機能であり、「誰が」「いつ」「どのドキュメントを」「何回閲覧したか」なども記録されます。デューデリジェンスのEnd-to-EndプロセスがVDRで行われることが、法曹界のデジタルトランスフォーメーションの第一歩となるでしょう。

AIを活用した契約分析

契約書などの大量のデジタルドキュメントをVDRにアップするのは、安全性とセキュリティのためだけではありません。ここで登場するのが、AIです。

契約分析にAI導入が進む理由とは

契約分析では、AIが広く使われるようになっています。たとえば、AIを用いることで膨大な書類のレビューを短時間で実行し、必要な条項をピンポイントでピックアップ。契約リニューアルに伴う契約条項の削除、追加、修正などを追跡するだけではなく、個々の変更部分により影響を受ける条項を抽出し、契約に関わるステークホルダーに知見を提供します。AIは、契約上必要となる実務時間を削減しながら、クライアントのベネフィットに貢献する契約内容にすることが可能です。AI学習によって法律事務所で抱える実務を減らせるメリットが存在するのです。

eBreviaによって変わる法律事務所の実務とその機能を紹介

DFINはAIを活用した契約書分析ツール「eBrevia」でリーガルテックを支援します。eBreviaは、デューデリジェンスとドキュメントレビューのプロセスを大幅に簡略化。その機能を一部ご紹介しましょう。

  • eBreviaは従来の契約書の原本がハードコピーでも簡単にデジタル文書に変換、契約書の電子化を迅速に進めることができます。DXに取り組む弁護士事務所や企業の法務部門がDX推進時に躊躇する障壁を取り除きます。
  • eBreviaは機械学習(マシーンラーニング)を採用。必要な条項が複数の契約書に分散されていても、クリック一つで集約し必要な情報を一か所に集約。各契約書間の連携が100%確実になり、契約内容の一貫性を維持することができます。
  • 契約条項の変更などがたとえ複数の契約書に亘っていても、AIが相違点を瞬時に表示。eBreviaプラットフォーム上で結果を確認し、レッドラインの可否判断も迅速に進められるようになります。

eBreviaは、膨大な時間を費やしていたドキュメントレビューを短時間で完了するための機能が実装されています。

リーガルテックがもたらす全体のメリット

法務業界は、他の業界に比べるとデジタルトランスフォーメーションの導入が遅れています。しかし、リーガルテック導入がもたらす業務量の削減、それに伴うスピードアップとコスト削減は、クライアントへのサービスの向上につながり競争が激しい弁護士事務所間の差別化を生み先行者利益につながるといえます。今後は弁護士やパラリーガルなどの能力をデータ管理の部分ではなく、クライアントサービスなどよりコアな部分に集中できるようになるでしょう。

仮想データルームプラットフォーム(Venue)とAIを活用した契約書分析(eBrevia)が浸透すれば、デューデリジェンスのような膨大なドキュメントレビューが必要な業務も大幅に簡略化できるようになることが期待されています。