2023年グローバルでより活発化するM&A。日本では政府や金融機関によるM&A促進施策で活性化へ

市場の不確実性が続く中でも、M&Aは成長のための不可欠かつ持続可能な戦略であり、取引が停滞するわけではありません。2023年はグローバル市場において、M&Aがより活発化すると予想されており、同様に、日本の市場でもM&Aがより活況を呈す可能性があります。

2023年のグローバルのディールメイキングは増加する

2023年は、M&Aが増加すると予想されています。投資家や企業のトップ経営者、銀行家をはじめとする投資部門に関与している人々の意識調査(The DealMaker Meter – Winter_2023)では、ディールメイキングの活況について楽観的な見方が大勢を占めています。

上記の調査によると、89%が今後3か月間にディールメイキングの取引数が現状維持もしくは拡大すると回答、また、取引ペースも現状維持もしくは拡大すると86%が回答しています。

このように、地政学的な不安定さや、パンデミックCOVID-19が完全に収束していない状況下でも、投資関係者はディールメイキングに前向きな態度を示しています。多くの意見は、M&Aを通じたビジネスの拡大が成長戦略に不可欠であるとの認識を共有しています。

2023年、日本のM&A市場が活性化へ – 政策や規制緩和がディールメイキングを加速

近年、日本のM&A市場は活況を呈しています。その背景には、政府や金融機関が実施するM&A活性化を促進する施策があり、その効果が2023年にさらに顕著に現れることが予想されています。

従来の企業買収では、失業者の増加や独占禁止法違反につながる懸念、さらに買収に対する社会的価値観が否定的であったことから、M&Aが進まないケースが多く見受けられました。しかし、社会構造の変化や国際競争の激化などから、企業経営の効率化や成長戦略としてM&A活動が重要視されており、ここ数年間で急激に日本のディールメイキング環境が整備されています。特に中小企業向けの支援策がM&A市場の活性化に貢献すること期待されています。

経済産業省「中小M&A推進計画」

2021年 経済産業省は、中小企業の成長や事業承継を円滑に進めM&A活動を支援する目的で「中小M&A推進計画」を策定。

中小企業庁 「中小M&A推進計画」

中小企業庁は、経営資源集約化等を推進し、今後5年間に実施すべき官民の取組を「中小M&A推進計画」として集約するための検討会を開催。中小企業庁による中小企業のM&Aに関する規制緩和と事業継承の支援策などが盛り込まれました。

日本政策投資銀行 「アジア向け投資ファンドを設立」

日本政策投資銀行は、中小企業の海外M&Aを支援する資金を増やし、取引を拡大するためにアジア中小企業のM&Aに特化した買収ファンドを導入。クロスボーダーM&Aを活性化し、日本、および現地優良企業の価値向上を支援。

東証「SPAC上場制度の投資者保護上の論点整理」を公表

2022年2月 東京証券取引所は、M&AやIPOを目的とした新たな資金調達手段として、さらに日本におけるディールメイキングの活性化を期待して日本版SPAC(特別買収目的会社)制度の検討会を開催。

日系企業の海外進出でさらに拡大するM&A

海外市場での需要拡大や人口減少による国内市場の縮小など、様々な要因から海外進出を検討する企業が増加しています。

日本企業が海外市場でビジネスを展開するためには、現地の文化やビジネス環境を理解することが必要です。とはいえ、従業員の現地派遣から始まり、駐在員事務所開設や現地法人の設立といった従来型の海外進出は、迅速さが求められる企業活動では支障をきたすことも。

一方、すでに確立された現地ネットワークを駆使し、市場シェアやブランド力をそのまま利用できる海外M&Aは、市場開拓をスピーディーに進めるスキームとして有効に活用されています。2020年には、セコムがアジア地域におけるセキュリティ事業拡大を目的にマレーシアとシンガポールのセキュリティ会社2社を買収した事例がこれに該当します。

さらに、海外企業のM&Aでは、買収先企業が持つ技術を利用し、市場競争力強化につなげる動きも盛んです。最近のケースでは、ソフトバンクによる半導体企業アームの買収事例があります。孫社長のパラダイムシフトへの先行投資を掲げて買収したアーム社は、高性能プロセッサを開発しており、グローバル市場での競争力が非常に高い企業。NVIDIAへの売却を狙ったように、投資としての価値もさることながらソフトバンクが自社で開発するAIやIoT、ロボットといった事業でアーム社の技術力を生かし競争力強化を狙ったM&Aです。

企業が海外に目を向ける中、政府の出先機関も企業の海外進出支援に本格的に取り組むようになりました。

2022年12月には、中小機構、NEXI、日本政策金融公庫の3機関による「海外ビジネス支援パッケージ」により、海外展開の課題解決、ニーズの発掘から海外ビジネスマッチング、金融支援まで切れ目なく支援する体制も確立されました。

これらの積極的な施策は、日本企業が海外進出する後押しとなり、今後のグローバル市場でのM&A活性化につながることが期待されています。

まとめ/DFINのサービスについて

M&A市場においては、市場の不確実性が最大の課題であると見なされていますが、取引が停滞するわけではありません。M&Aは引き続き成長のための不可欠かつ持続可能な戦略であり、市場の変化や経済の不確実性があっても強力な価値提案であり続けるということが示されています。

ただし、国境をまたぐM&Aにおけるセキュリティ面での不安点は、企業の重要情報や個人情報が関係者以外に流出する可能性があることです。知的財産権の侵害や盗難、企業秘密の漏洩、サイバー攻撃やハッキング、関係者の個人情報の漏洩、テロリストや犯罪組織による脅威などが挙げられます。

これらの不安点に対処するためには、M&Aにおけるセキュリティの重要性を認識し、事前に十分なセキュリティ調査や分析を行うことが必要です。また、関係者の教育やセキュリティポリシーの策定、情報システムの改善、専門家によるサイバーセキュリティ支援などが必要です。M&Aにおけるセキュリティ対策は、企業の信頼性やブランドイメージを守るためにも欠かせない重要な要素となります。

Fortune500社からの信頼も厚いDonnelley Financial Solutions (NYSE: DFIN) の提供する仮想データルームプラットフォーム(Venue)・AIを活用した契約書分析(eBrevia)は、効率的で安全性の高いSaaSの広範なクラウド型サービス。世界のキャピタルマーケットにおけるあらゆるタイプの投融資プロジェクトに対して、専門的で信頼性の高いリスクおよびコンプライアンスソリューションを提供しています。