2023年日本経済とプライベート・エクイティのディールメイキング展望

2022年、世界経済はインフレに翻弄され続けた1年でした。米国では、FRBによるインフレ抑制のための急激な金融引締め政策と、その影響による米国株式市場の停滞。そして、米国の株式・債券市場の影響を受け、乱高下するドル円相場。

2022年を振り返りながら、2023年の日本経済を占います。

2022年のハイライトと、そこから読み解ける2023年の動き・傾向

コロナ禍に大幅な金融緩和を行った各国の中央銀行は、その後の出口戦略に苦慮しています。インフレが進み、物価上昇圧力が住宅価格やエネルギーなど広範囲に及ぶと、中央銀行にとって使命である「物価の安定」が困難に。利上げと量的引締めを継続的に繰り返しながら、何とかバランスを取ろうと試みています。

一方日本では、他の先進国に比べ、インフレの進行が極めて緩やかで、従来の低金利政策が維持されました。しかし、2022年は、各国で利上げが進んだ結果、特にドル円相場では金利幅が拡大。一時は、1ドル=150円台まで円が値下がりし、1990年8月以来およそ32年ぶりの円安水準を更新しました。

結果として、このインフレの流れは、これまでの20年のあいだ、デフレに苦しんできた日本経済には大きなメリットを生む可能性があります。

企業が円安に伴うエネルギー資源や原材料費の高騰を最終製品価格に転嫁し、2023年1月から4月までに食品・飲料の7,000品目超が平均18%の大幅値上げを予定しています。出典:帝国データバンク

やむを得ない、という側面はありつつも消費者がその値上げを受け入れているということは、日本経済がデフレを脱却し、成長へと進んでいく可能性を秘めています。

世界経済とは異なる回復基調を歩む日本経済は、2023年に景気後退が予測される世界経済の中で、成長トレンドを上回ることが期待されています。

(2022年12月20日に日本銀行がイールドカーブコントロール(YCC政策)の修正を発表するなど、今後の日本銀行の金融緩和政策の変更には注視する必要があり)

プライベート・エクイティ・ファンドが日本企業の成長改革に与える影響とは

日本銀行の2020年の調査論文「わが国におけるプライベート・エクイティ・ファンドの可能性」(出典:日銀) において、「PEファンドを通じた企業再編は、総じて、従業員数を削減することなく、売上高を増加させる形で、従業員一人当たりの付加価値の増加が期待できることが示唆される」と、プライベート・エクイティ・ファンドが日本企業再編の可能性について述べられています。

実際、日本においてのプライベート・エクイティ・ファンドの存在感は高まりつつあり、米投資会社のベインキャピタルは、これまでに400億ドル超える投資案件を実行しています。2022年には、日立金属や恋活・婚活マッチングアプリのネットマーケティングのTOBを成立させています。

また、ベインキャピタルは、2006年の日本進出以降、少なくとも25件の投資実績を持ち、2023年4月には大阪市内に、東京に次ぐ第二の拠点を開設する計画も明らかに。『関西ビジョン2030』ですでに語られているとおり、進取の気性や寛容さがある一方、ブランド発信力が弱く地域間の連携不足が指摘されている関西企業の現状・価値向上に一石を投じることになりそうです。

そもそも、プライベート・エクイティは経営資源が乏しい企業に対して、アイデアとコミットメントのあるファイナンスとしての役割が期待されています。

日本企業の労働生産性は欧米に比べ低く、多くの企業が財務面でもディフェンシブ思考が強いため、余剰資金が成長のために有効活用されていません。その中で、プライベート・エクイティ・ファンドには企業価値の向上というミッションで、あらゆる企業に必要不可欠な売り上げの拡大や利益率の改善、大企業における非中核事業の活性化、同族・オーナー企業にみられる経営者の高齢化・事業継承という課題の解決策などで注目されています。

バイアウトに対する日本企業の考え方が少しずつ変化しつつあることも、プライベート・エクイティが求められる環境が整いつつあることの追い風といえるでしょう。

インフレが 日本経済やエクィティファンドに与える影響

日本総研のレポートによれば、2023年度の成長率は +1.5%と、経済活動の正常化が進み、内需主導の底堅い成長が持続されると予測されています。(出典:日本総研)

今後の日本経済は日本銀行の黒田東彦総裁が2023年4月に任期満了を迎え、黒田日銀が堅持する大規模緩和の緩和修正がどのように進んでいくのかに注目が集まっています。

20年来のデフレに苦しんできた日本経済にとって、昨今のインフレは必ずしも「悪」ではなく、大きな変化が生まれるティッピング・ポイントになる可能性を秘めています。

また、円安により、海外の投資ファンドが対日投資を拡大し、日本へのエクスポージャーを高めていることも、日本経済全体にとっては追い風といえるでしょう。

プライベート・エクイティ・ファンドがM&Aに関して取るべきアクションとDFINのサービス

2023年度以降の日本では、ますます市場が活性化・流動化し、M&A(合併・買収)、合併後の統合(PMI)などのニーズが増えることが予測できます。従来、債務超過に陥った企業を短期間に再生するために単純なリストラを実施することが主な手段だったPEファンドは、今、事業再生や買収企業同士の統合サポートなど中長期的な企業価値の向上を目指しています。

企業統合や事業再生において不可欠な取捨選択。ここでも、利害が相反するPEファンドと企業側のディールを円滑に進めるうえで信頼性のあるドキュメント管理システム導入は最優先課題です。Fortune500社からの信頼も厚いDonnelley Financial Solutions (NYSE: DFIN) の提供する仮想データルームプラットフォーム(Venue)・AIを活用した契約書分析(eBrevia)は、効率的で安全性の高いSaaSの広範なクラウド型サービス。世界のキャピタルマーケットにおけるあらゆるタイプの投融資プロジェクトに対して、専門的で信頼性の高いリスクおよびコンプライアンスソリューションを提供しています。

(新規株式公開(IPO)、二次上場/追加株式売出し、特別目的買収会社(SPAC)、M&A(合併・買収)、合併後の統合(PMI)、プライベート・エクイティなどの支援。)